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東京高等裁判所 平成11年(ネ)1118号 判決

控訴人・附帯被控訴人(以下「控訴人」という。)

住友不動産株式会社

右代表者代表取締役

高島準司

右訴訟代理人弁護士

遠藤英毅

今村健志

戸張正子

前田知克

幣原廣

小川原優之

神田安積

伊藤茂昭

進士肇

岡内真哉

田汲幸弘

右訴訟復代理人弁護士

高橋正人

被控訴人、附帯控訴人(以下「被控訴人」という。)

センチュリータワー株式会社

右代表者代表取締役

赤尾一夫

右訴訟代理人弁護士

升永英俊

倉田卓次

松添聖史

主文

一  本件控訴及び附帯控訴に基づき原判決を次のとおり変更する。

1  控訴人は被控訴人に対し、別紙第二債権目録記載の金員を支払え。

2  被控訴人のその余の本訴請求(当審において追加的変更した請求を含む。)を棄却する。

3  控訴人の反訴請求(当審において追加変更した請求を含む。)を棄却する。

二  訴訟費用は第一、二審及び本訴、反訴を通じてこれを一〇分し、その七を控訴人負担とし、その余を被控訴人の負担とする。

三  この判決の一項の1のうち、別紙第二債権目録から二億五六一七万一五七〇円及び内金五一一〇万九九七〇円に対する平成六年五月二七日から、内金五一三一万一六〇九円に対する同年七月八日から、内金五一一五万一九七八円に対する同年七月一七日から、内金一億〇二五九万八〇一三円に対する同年九月一九日から支払済みまで年六分の金員の支払を命じた部分を除いた、その余の部分は仮に執行することができる。

事実及び理由

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人の原審における本訴請求を棄却する。

3  控訴人の被控訴人に対する別紙物件目録一記載の建物のうちの同目録二記載部分の年額賃料が、①平成六年四月一日以降金一三億八一九四万四〇〇〇円、②同年一一月一日以降金八億六八六三万二〇〇〇円、③平成九年三月一日以降金七億八九六七万二〇〇〇円、④平成一一年三月一日以降金五億三三九三万九〇三五円であることを確認する。(当審における④の反訴請求を追加的変更)

4  被控訴人の附帯控訴に基づく当審における追加請求を棄却する。

5  訴訟費用は第一、二審を通じ本訴及び反訴とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

1  本件控訴を棄却する。

2  (附帯控訴)

控訴人は被控訴人に対し、第一債権目録記載の金員を支払え。(当審において本訴の請求を追加的に変更)

3  控訴人が当審において追加的変更した反訴請求を棄却する。

4  控訴費用及び附帯控訴費用は、控訴人の負担とする。

5  右第2項のうち当審において追加変更をした請求部分につき仮執行宣言

第二  事案の概要

一  控訴人と被控訴人は、別紙物件目録一記載の建物(以下「本件建物」という。)のうちの同目録二記載部分(以下「控訴人賃借部分」という。)につき、いわゆるサブリース契約である後記記載の契約(以下「本件契約」という。)を締結した。被控訴人は、本訴請求として、本件契約中の三年毎に一〇パーセントずつ賃料を増額する旨の賃料自動増額特約に基づいて当初賃料(年額一九億七七四〇万円)が増額されたと主張し、右増額後の賃料と控訴人の支払額との差額(不足分)を、約定に基づいて敷金から順次充当した結果、敷金の不足分(原審における請求額三億三二七五万五一一八円、当審における追加的請求額二九億九〇六二万三九三五円、合計三三億二三三七万九〇五三円)を生じたとしてその補充と、平成一〇年一月分から平成一一年一〇月分まで間の毎月の不足賃料(当審における追加的請求として一九億四五六一万六七四二円)及びそれに対する遅延損害金を請求した事案であり、反訴請求は、控訴人が被控訴人に対し、右同契約によって定められていた当初賃料額が、右賃料自動増額特約による増額の結果ないしはその増額がなかったとしても、一般のオフィス賃料相場と比較して不相当に高額となったことを理由に、借地借家法三二条等に基づいて原審において三回、当審において一回、本件契約における賃料の減額請求をしたことから、その各減額の結果の賃料額(第四回目の減額請求をした平成一一年三月一日以降は年額五億三三九三万九〇三五円と主張)の確認を求めた事案である。

二  以下の事実は前提事実として当事者間に争いがないか、各項末尾掲記の証拠によって明らかに認められるものである。

1(一)  控訴人(旧商号は、センチュリー土地建物株式会社)は、不動産の管理、賃貸等を目的とする、資本金二億五九二〇万円、資産合計二九三億六三〇四万九五三九円、当期未処理損失六三億円余(平成七年―平成八年第一〇期決算)の株式会社である(甲第一八四号証の一、二)。

(二)  控訴人は不動産の売買、売買の仲介、賃貸借等を目的とする、資本金八六七億七三〇〇万円、資産合計一兆四五四五億二八〇〇万円、当期未処分利益三一億三一〇〇万円(平成七年四月―平成八年三月第六三期決算)の不動産業界有数の株式会社である(甲第二一号証、同第一七六号証)。

2  本件建物は、建築家ノーマン・フォスターの設計にかかる東京都文京区本郷二丁目一三番二ないし一〇、一二、一五所在の本件土地に地上二一階、地下三階(敷地面積四〇〇〇平方メートル 建築面積二四〇〇平方メートル)の通称「センチュリータワービル」であるが、本件契約の対象となったのは、その内の被控訴人所有にかかる地上三階から一八階までの床面積合計10877.02平方メートルの控訴人賃借部分である(甲第一六三号証)。

3  被控訴人は、昭和六三年一二月一三日、仮契約である賃貸借予約契約(以下「本件仮契約」という。)を締結し、同契約に基づいて平成三年四月一六日、次の内容の賃貸借契約を締結し、控訴人賃借部分を控訴人に引き渡した。また、その約定の敷金の支払を受けた。

(一) 提携方法(一条)

(1) 被控訴人は、控訴人に対し、控訴人賃借部分を一括賃貸し、控訴人はこれを賃借する(一項)。

(2) 控訴人は、控訴人賃借部分を自己の責任と負担において第三者に転貸し、賃貸用オフィスビルとして運用する。ただし、控訴人は、転借人を決定する場合には、事前に被控訴人に相談して書面による承諾を得るものとする(二項本文但書第一号)。また、本件ビルのメンテナンスは被控訴人の自己責任と負担で行うものとし、控訴人賃借部分のメンテナンスは控訴人の責任と負担で行うものとし、それぞれの負担するメンテナンスの範囲と内容は双方別途協議して決定することになっている(二条)。もっとも、現実には本件ビル全体に係わる機能やシステムや共用部分の管理は被控訴人が一切行っている(被控訴人代表者)。

(二) 賃貸借期間(四条)

(1) 被控訴人が控訴人に一括賃貸する期間は、本件建物竣工時から満一五年間とする。ただし、期間が満了した場合には、被控訴人と控訴人が互いに協議の上、さらに一五年間本件契約を更新するものとし、以後同様とする(一項)。

(2) 本条の賃貸借期間中は、被控訴人、控訴人双方とも、次の場合以外は、中途解約できない(二項)。

① 天災地変等不可抗力によって本件建物が損壊し、その損壊が甚大なため本件建物を取り壊さなければならない場合(一三条一号本文)

② 被控訴人又は控訴人のいずれかが、本件契約の条項につき、重大な違反を犯し、被控訴人又は控訴人のいずれか一方の警告によってもこれが回復されない場合において六か月以上前に予告したとき(一六条)

(三) 賃料等(五条一ないし三項)

(1) 賃料 年額一九億七七四〇万円(消費税別)

共益費相当分 年額三億一六四〇万円

(2) 控訴人は、前項の賃料の一二分の一を毎月末にその月分を被控訴人の指定する方法で支払う。

(3) 賃料の支払起算日は、控訴人が被控訴人から控訴人賃借部分の引渡しを受けた日の翌日とする。

(四) 賃料の値上げ(六条)

(1) 賃料については、本件建物竣工時から満三年経過ごとに直前賃料の一〇パーセント値上げをする(一項)。

(2) 控訴人の転貸条件が、控訴人が被控訴人から一括賃借する条件を増減しても、被控訴人及び控訴人は、それを理由として賃料の変更を申し出ることはしない(二項)。

(3) 急激なインフレ、その他経済事情に著しい変動があった結果、第一項の値上げ率及び第七条一項の敷金が不相当になったときは、第一項の値上げ率を被控訴人、控訴人にて協議のうえ変更することができる(三項)。

(五) 敷金(七条)

(1) 控訴人は被控訴人に対し、敷金として昭和六三年一二月一四日と平成二年九月一七日に各一六億五五〇〇万円、平成三年四月一六日に一六億三三五〇万円の総額四九億四三五〇万円を預託した(一項)。

(2) 第六条第三項に規定する経済事情の変動があった後において、控訴人賃借部分に空室が生じた場合には、その部分の敷金について、被控訴人、控訴人協議の上前項の敷金を改定することができる(二項)。

(六) 敷金の充当等(八条)

(1) 充当

控訴人が、賃料その他本件契約に基づき被控訴人に対し支払うべき金員を延滞したときは、被控訴人は控訴人に対する通知催告をすることなく敷金をもって弁済に充当することができる(二項)。

(2) 補充

第二項の場合、控訴人は被控訴人から補充請求を受けた日から一〇日以内に敷金を補充しなければならない(三項)。

(七) 解約の禁止(一六条)

本件契約は、被控訴人、控訴人双方とも解約することはできない。但し、被控訴人又は控訴人のいずれかが、本件契約の条項につき、重大な違反を犯し、被控訴人又は控訴人のいずれかの一方の警告によってもこれが回復されない場合には、六か月以上前の予告をもって解約することができる。

4  (被控訴人の賃料の支払請求)

(一) 本件契約の賃料は、平成三年四月一六日から平成六年四月一五日までの賃料と共益費及び消費税(三パーセント)の合計である賃料等は二三億六二六一万四〇〇〇円(内訳 賃料一九億七七四〇万円 共益費相当分三億一六四〇万円 消費税六八八一万四〇〇〇円)であって、控訴人はそれを争いなく支払っていた。

(二) 被控訴人は控訴人に対し、本件賃料は、本件契約による賃料自動増額特約によると三年毎にその各従前賃料より一〇パーセント自動増額されるので、その本件賃料等の金額は、別表1に記載のとおり、第一次賃料増額が行われた平成六年四月一六日から平成九年四月一五日までは月額二億一三八五万七一八六円(ただし、平成六年四月分は同月一五日までは当初賃料額であるため二億〇五三七万〇八四二円となる。)であり、第二次の賃料の自動増額がおこなわれた平成九年四月一六日から平成一一年一〇月末日までの賃料等は月額二億三七〇四万二二二三円である(ただし、平成九年四月分の賃料等は、同月一五日までは従前賃料であるが同月一六日からは賃料が一〇パーセント増額され、消費税率が同月一日から三パーセントから五パーセントに増税されため二億二七五二万五九八四円である。)となる旨主張して請求している。

5  (控訴人の賃料減額請求の意思表示等)

(一) 控訴人は、平成六年二月九日到達の書面により、被控訴人に対し、控訴人賃借部分の平成六年四月一日以降の賃料を、年額金一九億七七四〇万円から金一三億八一九四万四〇〇〇円に減額する旨の意思表示(賃貸借契約条件見直しの申し入れ)をした(以下「第一賃料減額請求」という。乙第一号証の一、二、第二号証)。

(二) 控訴人は、平成六年一〇月二八日到達の書面により、被控訴人に対し、控訴人賃借部分の平成六年一一月一日以降の賃料を年額金八億六八六三万二〇〇〇円に減額する旨の意思表示をした(以下「第二賃料減額請求」という。乙第三号証の一、二)。

(三) 控訴人は、被控訴人に対し、平成九年二月七日の本件口頭弁論期日において、控訴人賃借部分の平成九年三月一日以降の賃料を年額金七億八九六七万二〇〇〇円に減額する旨の意思表示をした(以下「第三賃料減額請求」という。弁論の全趣旨)。

(四) 控訴人は被控訴人に対し、平成一一年二月二四日到達の内容証明郵便により、控訴人賃借部分の賃料を平成一一年三月一日以降年額五億三三九三万九〇三五円に減額する旨の意思表示をした(以下「第四賃料減額請求」という。乙第七三号証の一、二)。

(五) そして、控訴人は、右賃料減額の意思表示により減額されたとしたが、本件賃料等については、別表1の控訴人支払額欄に記載のとおり、平成六年九月分から平成九年三月分までは月額一億四五七七万四五二五円(内訳、第一賃料減額請求による結果の月額一億一五一六万二〇〇〇円、その消費税三パーセント三四五万四八六〇円、共益費相当分月額二六三六万六六六六円、その消費税三パーセント七九万〇九九九円の合計)を、平成九年四月分から平成一一年一〇月分までは一億四八六〇万五〇九九円(前記内訳の消費税率を五パーセントに改めたもの)を支払った(ただし、平成九年四月と平成一〇年四月分は、一億四八六〇万五一一一円を支払っている。)。

(六) したがって、被控訴人主張の賃料等と控訴人の各月の支払額との差額は、別表1差額欄記載のとおりとなる。

6  (被控訴人の本件契約第八条第二項、三項に基づく不足賃料額の敷金からの充当とその結果による不足敷金の補充請求の催告等)

(一) 被控訴人は、平成六年五月一日、同年四月分の別表2記載の差額賃料を敷金から充当した上で、同年五月一六日到達の書面により、控訴人に対し、本件契約八条三項に基づき、右不足分を充当したことにより生じた敷金の不足分を一〇日以内に補充するよう催告した(甲第四号証の一、二)。

(二) 被控訴人は、同年六月二四日、七月五日及び九月七日、本件契約八条二項に基づき、平成六年五月分ないし同年八月分別表2記載の各差額賃料をそれぞれ敷金から充当した上で、同年六月二七日、七月六日及び九月八日にそれぞれ到達した書面により、控訴人に対し、本件契約八条三項に基づき、右不足分を充当したことにより生じた敷金の不足分を一〇日以内に補充するよう催告した(甲第四三号証の一、二、第四五号証の一、二、第四七号証の一、二)。

(三) 被控訴人は、同年九月八日到達の書面により、控訴人に対し、本件契約八条三項に基づき、平成六年五月分ないし八月分の別表2記載の前記本件賃料の差額についてその約定支払期日たる各月末の翌日から前記敷金充当日までの間の商事法定利率年六パーセントの割合による各遅延損害金を敷金から充当したことにより生じた敷金の不足分を一〇日以内に補充するよう催告した(甲第四七号証の一、二)。

(四) 被控訴人は、平成六年四月分から平成七年四月分までの別表2に記載のとおりの各差額及び各遅延損害金を、平成七年五月一五日に敷金から充当した結果、控訴人に対し、同月一六日到達の内容証明郵便をもって本件契約八条に基づいて右充当によって不足した敷金の補充を右同様に請求をした(甲第二二八号証)。

(五) 被控訴人は、控訴人に対し、別表2に記載のとおり、本件契約に基づく敷金補充請求権に基づき三三億二三三七万九〇五三円を、及び本件契約に基づく賃料等支払請求権に基づき平成一〇年一月分から平成一一年一〇月分までの差額合計一九億四五六一万六七四二円との合計五二億六八九九万五七九五円及び別紙第一債権目録記載の各内金に対する商事法定利率年六分による遅延損害金の支払いを求めている。

7(一)  なお、被控訴人は、平成三年一一月二五日、本件建物の持分一〇万分の三四五四を財団法人センチュリー文化財団(以下「訴外財団」という。)に売却したが、それは訴外財団が使用していた本件建物の地下二階部分(以下「本件売却部分」という。)を目的物としたものであった。

(二)  本件売却部分は、建物の区分所有の登記はされていないが、本件建物の他の部分とは構造上独立した部分であって、訴外財団の使用等によって本件控訴人賃借部分に何らの影響を及ぼすものでない。被控訴人は、訴外財団と間において、訴外財団は控訴人に対する共同賃貸人になるものではなく、本件契約とは一切関係をもたず、被控訴人の本件契約における賃貸人としての地位に何ら影響を及ぼさないことに合意している。控訴人も、訴外財団が本件契約における共同賃貸人等契約当事者でないことを認めている。

したがって、本件契約における賃貸人としての地位は、被控訴人が単独で有しているものである(甲第二三九ないし第二四一号証、弁論の全趣旨)。

第三  争点

一  控訴人の主張

(本件契約の法的性格)

1 本件契約は、転貸条件付建物賃貸借契約であるが、同契約は、被控訴人が控訴人に対し建物の収益をさせることを約し、控訴人がこれに対しその対価である賃料を支払うことを約したものであるから、その本質は建物の使用収益を目的とする賃貸借契約である。また、本件契約における被控訴人の動機が控訴人からの賃料収入を確保することであり、控訴人の動機が本件建物の転貸収入と被控訴人に支払う賃料との差額を利益として取得することにあったとしても、そのための法形式として、あえて賃貸借契約という契約類型を選択して本件契約を締結した以上、本件契約は賃貸借契約であり、借地借家法の適用を受ける。

本件契約にあっては、本件建物の全部の一括賃貸借ではなく、本件建物の一部をその目的物とするものであり、かつ、特約により、転借人の決定には賃貸人である被控訴人の承諾が必要であり、不動産会社である控訴人の意思のみで事業を行う契約形態ではなく、被控訴人は、控訴人が転貸をする際に承諾権限を通じて控訴人の事業に介入しているものである。本件契約は、控訴人と被控訴人との間で、転貸条件付賃貸借契約を締結しているに過ぎない。

2 サブリース契約は、賃料不減額を意味する最低保証を本質的な特色とするものではない。サブリース契約の本質は、不動産所有者に代わって賃貸借に関する煩瑣な事務を不動産会社が行い、かつ管理委託や土地信託では実現できない空室保証が得られる一括転貸条件付き賃貸借契約に過ぎないもので、多様な形式があり、本件におけるその賃料の決定の方法は、空室保証型のいわゆる仕切り方式と呼ばれるものである。

サブリース契約における、賃料保証の意義は、これまで賃料相場の大幅かつ長期の下落は想定され得ない状況であったので、空室保証と、著しい事情の変更が無い限り長期間約定賃料を支払うこと及び当時想定される経済変動の範囲内で値上げ率どおりに賃料を値上げすることを意味するに過ぎない。

3(一) 賃料自動増額特約は、継続的な賃貸借契約関係の中で、賃料が原則として上昇する傾向にあることを前提にその上昇する賃料の改定額が紛争となることを避けるために、あらかじめ当事者間で一定の上昇率を予測し、これを規定する目的から締結されるもので、賃料相場の下落は全く想定されていない場合に締結されるものである。

したがって、賃料自動増額条項が存しても、当事者が想定していた経済事情の変動の範囲内であれば、自動増額条項が適用され、範囲を超えれば賃料増減額請求権が具体的に認められるのである。すなわち、賃料の減額を相当とする事情(契約締結後の経済事情に契約締結時において当事者が予測しえなかった著しい変動)があることから、契約締結時の前提となっていた事実が欠けて、賃料増額特約をそのまま適用することが著しく不合理な結果となる場合に、借地借家法三二条に基づき賃料減額請求を行使できる。

この賃料自動増額の特約自体に賃料不減額特約(減額請求権の放棄)の趣旨は含まれないことは明らかである。

(二) 賃料自動増額特約は、それに従って増額された賃料が「相当額」であるかぎりはそれに従った増額が行われるが、その特約によって増額された賃料が過大額ないし過小額となって明らかに不相当である場合には、賃貸借契約の当事者は、借地借家法所定の賃料増減額請求ができるものと解釈しない限り、強行法規である借地借家法三二条に違反することになる。なお、同法三二条の強行法規性は、同法三七条に基づくものではなく、「契約の条件にかかわらず」という同法三二条の文言及び公平の観点から私的自治の例外を定めた立法趣旨に基づくものである。

(三) なお、賃料自動増額条項が存しても賃料増額請求が可能となるには、自動増額条項による賃料と適正賃料との乖離が発生したこと、自動増額条項合意時にそのような乖離を予想し得なかったこと、自動増額条項どおりに増額をすることが不公平であるとの要件が充たされれば良いと解されるべきである。

4(一) 借地借家法三二条は、更新が強制されることにより長期の契約期間を前提とする継続的契約である賃貸借契約において、当事者間の当初の合意が時の経過によって不相当となった場合に、公平の観点から、長期間にわたる当事者問の合理的な対価関係を維持する趣旨の規定であり、市民法原理に基づくもので、その要件において、民法の一般的な事情変更の原則の要件を緩和したものである。

借地借家法は、建物の種類(例えば事業用建物ついても)について特別の適用除外規定を設けていないのであるから、一定期間の賃料不増額特約の有効性を認める同法三二条一項但書の場合を除き、経済的弱者である賃借人の保護のみを目的としたものではなく、当事者間の公平を優先して私的自治を修正するものである。従って、賃貸借契約にあっては、賃借人が大規模不動産会社であっても、いわゆるサブリース契約等の転貸借を目的するものであっても、事業性を有していても、建物賃貸借契約である以上公平の観点から私的自治の修正原理として適用される。

(二) なお、本件契約締結当時は、当事者双方共に賃料相場の大幅かつ長期的な下落の事態は想定していなかったもので、本件契約六条は賃料減額請求が必要な事態を予定した規定ではなかったのであるから、原則に戻って借地借家法三二条が適用される。

(三) 仮に、理論的に借地借家法三二条の適用ではなく、事情変更に基づく賃貸借契約における賃料減額が検討される場合にあっても借地借家法三二条の要件が準用されるべきである。

5(一) 本件契約においては、「賃料保証」の用語は使用されていないし、その記載のある書面もない。また、本件契約に賃料不減額の合意もしくは賃料増減額請求権の放棄と見られるような合意も存しない。

(二)(1) 本件契約六条一項は、賃料相場の上昇を前提に、通常予想される程度の賃料相場の上昇率に合わせた自動増額率を定めて賃料増額請求権行使の煩雑さを回避したものである。同条三項は、著しい経済事情の変動があって想定していた賃料相場の変動以上に相場が上昇した場合には、協議により賃料の値上げ率等を変更できることを確認した規定であって、当事者に単なる協議を義務付けたにすぎないものではなく、協議が成立しなければ形成権としての賃料増減額請求権を行使しうるものと解すべきである。

本件契約六条三項は、賃料相場が契約時に想定された状態を超えて著しく上昇したとき、ないし著しく低下した場合には適用されない規定であり、本件契約六条一項、三項は右前提とされた場合に限って、借地借家法三二条の賃料増減額請求権に優先する自動増額条項及び利益調整条項に過ぎない。賃料自動増額条項による賃料と適正賃料との乖離が発生したときは、賃料自動増額条項合意時にそのような乖離を予想し得なかったこと、賃料自動増額条項どおり増額を認めること、ないしは逆にその増額率の増額に制限することが不公平であるようなときには、当事者双方は、いずれも借地借家法三二条に基づいて賃料増額ないし賃料減額請求権を行使できると解される。そう解さない限り、本件契約六条一、三項は、原則としての強行法規である借地借家法三二条の賃料増減額請求権に抵触するので、無効であると解さなければならない。

(2) 本件契約六条二項は、サブリース契約おけるいわゆるガラス張り方式を採用しないこと、即ち転貸料にスライドして賃料を決定する方式ではなく、定額の賃料を支払う旨を約した、いわゆる仕切り方式を採用したことを確認したものである。しかし、本件契約六条二項は、借地借家法三二条の適用を排除しないので、賃料の最低額を保証したものではない。

したがって、本件契約には、借地借家法三二条が適用されることは明らかである。また、本件契約は特約により、転借人の決定には賃貸人である被控訴人の承諾が必要であり、不動産会社である控訴人の意思のみで事業を行う契約形態ではなく、また、本来サブリーサーが行うとされているビル管理について控訴人は一切関与できず、そのため控訴人は本件ビルの構造等の実体を正確に把握できない形態のものである。控訴人は被控訴人との間で転貸条件付賃貸借契約を締結しているに過ぎず、被控訴人は、控訴人が転貸をする際に承諾権限を通じて控訴人の事業に介入している。

6 (本件契約六条三項に基づく賃料減額請求)

(一) 本件契約六条三項は、同条一項を前提として、賃料相場が三年間で一〇パーセント以上の急上昇を続けた場合に、第一項以上に増額する方向で協議することを定めたものである。契約当事者は何れも、一貫して上昇してきた賃料相場が契約後も上昇し続けることのみを想定して契約したのであるから、賃料減額については合意が欠缺している。文言上は「値上げ率を甲・乙協議のうえ変更することができる」となっているので、値上げ率をマイナスに変更することもできると解釈しうる。また、契約当事者は賃料相場の変動に対価を合理的に変更する旨合意していたのであるから、マイナス方向の経済事情の変動が存した場合には、値上げ率をマイナスに変更することが合理的な意思解釈である(乙第一一〇号証三〇頁)。

したがって、本件契約六条三項に基づいて、控訴人は、本件契約六条一項の値上げ率をマイナス方向にも変更することができるものと解されるべきである。また、右変更は、その時期について特段の制限を設けていないので、不動産価格の下落や賃料相場の下落が著しければ何時でも行使できる。

(二) よって、控訴人の、第一ないし第四の各賃料減額請求は、借地借家法三二条と同時に本件契約六条三項に基づく、賃料の変更の意思表示と解されるべきである。

7(一) 当初賃料(坪単価五万円)は、本件予約契約時点で引き渡し時の転貸料(坪単価五万五〇〇〇円)を想定して定められたものである(乙第六三号証)。本件予約契約が成立した後、いわゆるバブル経済の崩壊によって株価、地価が急激に下落し、都心部のオフィス需要が急速に冷え込んだ結果、本件ではその賃料と一般賃料相場との間の乖離は極めて大きく、控訴人による減額請求権を行使した各時点にあっては、本件賃料はいずれも不相当に高額となった。鑑定によれば、適正賃料(消費税別)は、平成六年四月一日では月額九一七四万四〇〇〇円、平成六年一一月一日では月額八三二五万二〇〇〇円、平成九年三月一日では月額六八七八万三〇〇〇円、平成一一年三月一日では月額六五二〇万円(乙第一三四号証)である。右各適正賃料額と建物引渡当時の合意賃料月額一億六四七八万三三三三円及び賃料自動増額条項の適用を前提とする被控訴人の主張額とを対比すると、平成六年四月一六日時点で約五〇パーセント、平成九年四月時点では約三五パーセントにしかならない。そして、平成一一年三月一日時点の本件適正賃料額は、その前の右平成九年三月一日時点の適正賃料額と比較しても、五パーセント強下落している。

(二) 控訴人が被控訴人に預託した敷金は当初月額賃料の約三〇か月分相当額である四九億四三五〇万円であって、現在の敷金相場からすると極めて高額である。これに対して、控訴人がテナントから現在預託を受けている敷金は一〇億二六五九万九〇〇〇円であるから、控訴人には、多額の敷金差額に対する運用損(裁判所の鑑定に従い年4.5パーセントの運用利回りとする。)年額金一億七六二六万〇五四五円(月額金一四六八万八三七八円)が発生している状態である。

(三) したがって、本件契約の本件賃料は、借地借家法三二条、又は、本件契約六条三項に基づく本件第一ないし第四の賃料減額請求により、平成六年四月一日以降は年額一三億八一九四万四〇〇〇円に、同年一一月一日以降は年額八億六八六三万二〇〇〇円に、平成九年三月一日以降は年額金七億八九六七万二〇〇〇円に、平成一一年三月一日以降は年額五億三三九三万九〇三五円に順次減額された。

8 (緩やかな事情変更の原則)

賃貸借契約等の継続的役務提供契約においては、契約成立の当時その基礎となっていた事情が変更した場合には、当初の契約内容を貫くと極めて不公平をもたらすので、事情変更原則がその契約内容の改定の効果をもたらす限度で採用されるべきである。

本件では不動産価格が暴落しているほか、鑑定によれば本件控訴人賃借部分の適正賃料額は当初賃料の四二パーセントにまで下落しているので、事情変更の原則の適用により、その減額が図られるべきである。

9 (民法六七四条二項類推適用)

被控訴人は、本件建物についてはその一部を控訴人に賃貸して収益を上げるとともに、自らもスポーツ倶楽部を運営するなどの事業を営んでいるのであるから、控訴人と被控訴人との関係は、組合類似の関係にある。したがって、その損益分配については、民法六七四条二項を類推適用して、原則として当初の双方の予定に従って、その転貸料の九〇パーセントが被控訴人への支払賃料とされるべきである。

10 (信託法類推適用)

事業受託契約は土地信託に極めて類似しているので、本件賃貸借契約は事業受託契約ととらえられる。そして、被控訴人の経済的な目論みは、転貸料を不動産会社である控訴人と配分することであった。したがって、本件にも信託契約の場合の実績配当主義を類推適用されるべきであるところ、平成一一年三月一日時点の転貸料は本件契約における賃料より低いので、その配分は、控訴人が収受した転貸料年額七億一〇一九万九五八〇円から敷金運用差損年額一億七六二六万〇五四五円を差し引いた、年額五億三三九三万九〇三五円(月額金四四四九万四九一九円)とされるのが相当である。

11 (敷金補充請求に対する不安の抗弁)

被控訴人は、倒産の危機に瀕しているのであるから、これは、継続的契約である本件契約の相手方に信用不安が生じている場合に当たる。したがって、控訴人に先履行義務である敷金補充を強いることは、後日被控訴人からの敷金全額の返還が行われない虞があるので信義則に反する。控訴人は、被控訴人からの敷金返還請求が確実であるとの保証がなされない限り、右敷金の補充を拒絶する。

仮に、控訴人に右敷金補充義務の先履行義務が存するとしても、右の事情からすると、少なくともそれに対する遅延損害金の発生を認めることは信義則に反する。

12 (敷金充当による複利計算について)

被控訴人は、賃料等支払期日の翌日から敷金充当の日まで商事法定利率年六パーセントの割合による遅延損害金を請求し、かつ敷金充当の日までに発生した遅延損害金も敷金に充当した上で、更に支払済みまで六パーセントの遅延損害金を請求している。敷金充当権は、本来滞納が発生した場合に、賃貸人に滞納賃料を請求するか敷金を充当して滞納賃料請求の労をかけないかの選択権を与えたものであるから、滞納賃料を直接請求しないで、その充当をするのは不当である。

二  被控訴人の主張

1  (本件契約の性質について)

本件契約は、いわゆるサブリース契約と称されるものであって、借地借家法の適用を受ける単純な賃貸借契約ではない。本件契約の実質は、控訴人が、被控訴人に対して賃料保証を与えるというリスクを負担する一方で、控訴人賃借部分を第三者に転貸して得る賃料と被控訴人に支払う賃料との差額という投機的利益を取得することを目的とする、いわゆるハイリスク、ハイリターンの金融取引である。

すなわち、本件契約は、借地借家法が規定している「建物利用権とその対価の支払」ではなく、控訴人が本件建物の所有者である被控訴人から、控訴人賃借部分の賃貸権の取得とその対価の支払と解されるべきである。すなわち、本件契約によって控訴人が取得した権利は、目的物たる控訴人賃借部分の直接の使用権ではなく、これを第三者に賃貸して収益をあげる権利(賃貸権)であって、転貸が原則として禁止されている賃貸借契約とはその法的構造を異にしている。本件契約は、不動産賃貸権あるいは経営権の一五年間の控訴人への委譲を目的とするものである。したがって、本件契約において、「賃料」名目で支払われる対価は、典型契約である賃貸借契約における賃料とは異なり、むしろ、それは右賃貸権取得(委譲)の対価であって、いわば「賃貸権の購入代金」としての性質を有するものであるから、各月の賃料の本質は、本件契約で定められた賃料自動増額特約の適用を前提に計算された一五年の賃料の総合計三六二億一七四〇万六八三〇円の分割払金(一八〇回)であると解されるべきである。

したがって、借地借家法の適用はないので、控訴人には同法三二条所定の賃料減額請求権は存しない。

2  借地借家法は、経済的弱者である賃借人の居住権を保護することを目的とする社会立法である。したがって、我が国を代表する不動産会社であり、被控訴人と比較して圧倒的な経済的強者である控訴人が賃借人となっている本件契約には、同法は適用されない。また、このような控訴人が、経済変動を予期した上で行う、純然たる商行為としての投機取引に対して、社会政策的考慮を基礎とする借地借家法を適用すべきではない。

3  本件契約六条は、一項において賃料自動増額特約を、二項において、賃料は控訴人の転貸条件と無関係であることを、三項において、急激な経済事情の変動があった場合に限り、例外的に賃料の値上げ率を増減するという方法により、被控訴人と控訴人との間の利益調整を図ることを、それぞれ規定している。

同条項は、控訴人と被控訴人との間で、あらかじめ合理的な利益調整方法を定めたものとして、原則として有効であり、控訴人は、被控訴人に対し、賃料減額を請求することはできない。

もっとも、契約締結後、急激な事情の変更があり、当該事情変更後もなお賃料自動増額特約に当事者を拘束し続けることが衡平や信義則に反する場合には、例外的に、同特約は無効となりうるが、本件では、そのような事情は存在しない。

4  約定賃料が、借地借家法三二条にいう不相当になったか否かの判断は、契約締結後、急激な事情の変更が生じた場合において、このような事情変更後も従来の賃料自動増額特約に当事者を拘束することが、信義衡平の原則に照らして不合理であるか否かという観点からなされるべきである。本件では、そもそも契約締結後に急激な事情の変更が生じたとはいえないし、賃料減額請求を認めなければ、信義衡平の原則に照らして不合理であるともいえない。

5  (本訴賃料減額請求に対する再抗弁《反訴抗弁》と反論)

控訴人は、本件契約六条により、事前に被控訴人に対する賃料減額請求権を放棄した。仮に、借地借家法三二条の強行法規性により、賃料減額請求権の事前放棄が認められないとしても、控訴人は、自己の経営判断に基づいて、自由意思により本件契約六条を契約文言として差し入れ、被控訴人は、これを信頼して本件契約を締結したものである。

したがって、控訴人が、賃料減額請求権を行使して、右約定を反故にすることは、信義則に反し、権利の濫用として許されない。

そして、仮に、本件契約につき、借地借家法三二条が適用あるとしても、本件契約当事者たる控訴人及び被控訴人とも、一五年間の長期契約である本件契約の全期間における賃料等の総額を本件契約の基礎として合意しているのであるから、契約締結後生じたバブル経済の崩壊による賃料相場の大幅な下落があっても、同条に定める賃料が「不相当」になったものとはならないものと解されるべきである。

6(一)  控訴人は、被控訴人に対し、本件契約の締結に際して、約定賃料を保証する旨を表示した。そこで被控訴人はそれを信頼して、本件契約の相手方を控訴人とし、右賃料収入を前提として控訴人賃借部分の賃貸事業を遂行することとして、銀行から本件建物の建築費等一八一億円を借入れた。そのため、本件賃料減額が認められるときには、被控訴人の右事業の継続は困難を来すと共に右借入金の返済も不能となる。

(二)  したがって、被控訴人の右信頼は保護されるべきであるので、控訴人の本件賃料減額請求は、禁反言の原則に反するのであり、又は、権利の濫用として許されない。

7  被控訴人は、その経営状況が悪化していることについては、平成九年二月三日付準備書面で主張しており、また同時に提出した甲第一八四号証の一ないし九でも明らかにしていたのであるから、控訴人は、右時点後本件不安の抗弁を提出することが十分可能であった。それなのに、本件不安の抗弁を平成一一年一一月三〇日の当審第五回口頭弁論期日において主張するのは、故意又は重過失による時機に後れた攻撃防御方法の提出であって、却下されるべきである。

また、被控訴人の経営状況の悪化は、控訴人の賃料の一部不払という債務不履行に起因するものであるから、自ら惹起した状況を理由とする不安の抗弁の主張は、信義則ないしクリーンハンズの原則に反する。

8  敷金補充請求権と敷金返還請求権は、履行に先後関係があるということだけであって、相互に対価的牽連関係はないので、不安の抗弁の適用の基礎を欠いている。また、被控訴人の未払賃料の敷金充当及びその結果による不足敷金の支払請求は、本件契約八条一、二項に従った適法な行為である。

そして、控訴人は、本件契約における約定賃料の一部を未払いのまま、本件契約の目的物を利用してるのであるから、被控訴人が本件契約によって定められた敷金の充当権を行使したことを非難することは、いわゆる「クリーンハンズ」の原則に反する主張であって、信義則上許されない。

9  (予備的請求原因)

仮に、控訴人の賃料減額請求が認められるときには、

(一) 控訴人は、宅地建物取引業の免許を有する不動産業者であって、また、サブリース事業の取引等の不動産取引についての専門的知識を有するものである。他方その十分な知識のない被控訴人に対して、本件契約に関する賃貸人側の危険ないし非専門家には必ずしも理解が容易でない事項である、「賃料保証の契約をしても借地借家法三二条により賃料減額請求権の行使がなされる可能性がある。」こと等について、宅建業者としての重要事項説明義務として、ないしは、信義則上の説明義務に基づいて、説明すべきであった。控訴人は、右説明義務を故意又は過失により懈怠したことにより、本件契約における約定賃料については減額はなされないものと信じて本件契約を締結した被控訴人に対し、その信頼した収益に減少を生じさせた。その結果、被控訴人は、賃料減額請求によって減額された賃料相当額の損害を被った。

(二) 又は、控訴人は、被控訴人に対し、故意又は過失により、真実には法的効力は存しないのにこれがあるように装って、本件契約六条等によって賃料保証を約束して被控訴人を欺罔し、それを誤信した被控訴人に本件契約を締結させ、もって、被控訴人が保証されたと信じた賃料と減額請求によって減額された賃料との差額の損害を被らしめた。

(三) よって、被控訴人は控訴人に対し、民法七〇九条の損害賠償請求権に基づき右損害の賠償を求める。

第四  争点に対する判断

一  (本件契約の締結の経緯と、その法的性質について)

甲第一号証、同第五、第六号証、同第九ないし第一三号証、同第一八、第一九号証、同第五九号証、同第七五号証、同第一三二、第一三三号証、同第一四〇、第一四一号証、同第一五四号証、同第一五七号証、同第一六一、第一六二号証、同第一六五号証、同第一六六号証の一ないし一三、同第一六七ないし第一六九号証、同第一七八号証の一ないし七、同第二〇〇号証、乙第一号証の一、二、同第四ないし第九号証、同第一二号証、同第四〇号証の一ないし四、同第六三号証、同第六四号証、同第七四号証、証人田口正之の証言、証人横須賀博の証言、被控訴人代表者赤尾一夫本人尋問の結果及び弁論の全趣旨を総合すれば、以下の事実が認められる。

1  昭和時代から本件契約締結時ころに至る不動産賃貸市場等における不動産賃貸借の賃料特にオフィスビル賃料の状況は、極端な下落傾向を示したことはなく順調に上昇し、特に昭和六二年ころからのいわゆるバブル時期には不動産や株式などの資産価格を急騰させ、平成二年四月の不動産向け銀行融資の総量規制によって、いわゆるバブル崩壊の現象を生じた結果、まず株価は急落し景気は冷え込むに至ったが、地価の下落には直ぐには連動せず、それが確認されて規制が解除されたのは平成四年一月ころ以降である。オフィスビル賃料も、その頃から下がり始めた。

2(一)  被控訴人と控訴人との間に本件仮契約が締結された交渉経過等は次のとおりである。

(1) 被控訴人は、本件土地の利用方法として、小規模な自社ビルを建てるか、第三者への賃貸を目的とする高層ビルを建築するかを検討していた。そこに、三井不動産株式会社(以下「三井不動産」という。)が、昭和六一年ころ、本件土地に賃貸用の高層オフィスビルを建築して、その収益でその建築費を返済するという内容の企画を提案してきた。そのこともあって、被控訴人は、高層ビルを建築することに決定した。そこで、被控訴人は、昭和六一年一一月ころ、著名な建築家であるノーマン・フォスターに本件建物の設計を依頼し、同年一二月、フォスター設計事務所との間で、本件建物の設計についての覚書を締結した。控訴人も、昭和六二年六月一二日、被控訴人に対し、本件土地上に被控訴人が建築したビルの主要部分を控訴人が一括賃借して第三者に転貸することにより、被控訴人に対し長期に安定した収入を得させるという内容の企画を提案した。そこで被控訴人は、本件建物に関する契約内容を具体化するため、三井不動産と控訴人の提案内容を比較しながら、双方と交渉を併行して行った。

(2) 控訴人は、昭和六三年一〇月、被控訴人に対し、企画提案書(案)(その内容は、被控訴人が直接運営又は自己使用する部分を除き、控訴人がビル全館を一括賃借し、控訴人の責任と負担で一般テナントに転貸する。賃料は年額二三億一〇七二万円《共益費含む》とする。この賃料はテナントの入居状況のいかんにかかわらず一〇〇パーセント支払う。賃料のうち、一九億九二〇〇万円については、満三年経過する毎に、直前賃料の一〇パーセント値上げする。甲第五号証)を提出した。被控訴人は、右の企画提案書(案)の内容と、三井不動産から同年一一月一日に提出された企画提案書(甲第六号証)の内容とを比較した結果、控訴人の提案の方が優れていると考えたので、控訴人との間で本件仮契約を締結することとして、その具体的な契約条項の検討に入った。

そこで、控訴人は、昭和六三年一一月二一日、被控訴人に対し、「賃貸借予約契約書(案)」(乙第五号証)を提出した。

(3) これを受けて被控訴人は、同年一一月三〇日、控訴人に対し、右同案一条二項に「転借人(テナント)を決定する場合には、事前に被控訴人に相談すること」とされていたのを、「その決定については、事前に被控訴人に相談した上、被控訴人の書面による承諾を得るものとし、転借人を勧誘するためのパンフレット作成等も同様とする。」と、また、同五条一項に「賃貸借の期間は二〇年する。」とされていたのを、「一五年にする。」に、同七条三項に「急激なインフレ、その他経済事情に激変があったときは、本条第一項の値上げ率を別途協議のうえ変更することができる。」とされていたのを、「急激な」という文言と「激変」という文言をはずし、「インフレ、経済事情の変動その他第一項の値上げ率を不相当とする事情の変更があったときは、本条一項の値上げ率を被控訴人、控訴人にて協議のうえ変更することができる。」にそれぞれ変更し、それに追加して「第七条の賃料が改定(値上げ)されるのに連動して、敷金額も同一条件で改定する」旨の条項を同八条二項に追加する旨の「賃貸借予約契約書(案)」(乙第六号証)と題する書面で修正案を回答した。

(4) 控訴人は、同年一二月五日、被控訴人に対し、被控訴人の右修正案に対応してこれを再度一部変更した「賃貸借予約契約書(案)」(乙第七号証)を提出した。すなわち、同七条三項の賃料の値上げ率の変更について、「急激なインフレ、その他経済事情に著しい変動があった結果、第一項の値上げ率が不相当になったときは、」としたいとして実質的に被控訴人の右修正を原案の内容に復活させ、同八条二項を「前条第三項に規定する経済事情の変動があった後において、控訴人賃借部分に空室が生じた場合にはその部分の敷金について、被控訴人、控訴人協議の上前項の敷金を改訂することができる。」に各再修正することを提案した。

(5) 被控訴人は、右再修正を了承した。また、契約面積が若干変動したため、面積、賃料及び敷金額の修正が合意されたほか、被控訴人からの申し入れに基づき、右同七条三項に「および次条第一項の敷金」という文言が付加されることとなった(乙第八号証)。右交渉を経て、被控訴人と控訴人は、昭和六三年一二月一三日、本件仮契約を締結した(なお、本件仮契約第七条第三項は、本件契約第六条第三項に引き継がれ、同八条二項は、本件契約七条二項に引き継がれている。)。

(6) 同六条三項の文言の変更をめぐる交渉は、被控訴人と控訴人間で前提とされた被控訴人が取得する賃料額と転貸料額間の差額の大きさが、インフレその他の経済事情の変動により、転貸料が著しく増加した場合、前記自動賃料増額条項による当初賃料の増加のみでは十分に修正が効かない事態が生ずることを被控訴人が虞って要求したもので、当時右契約締結交渉の過程にあっては、被控訴人と控訴人双方とも、オフィスの賃料の一般的相場が長期間大幅に低落するとの事態を想定していなかった。そして、本件契約の六条二項と三項の文言を総合すると、当事者双方は従前の不動産賃貸市場における賃料相場の動向の実績等から少なくとも年三パーセント位の賃料相場の上昇傾向が今後も続くものと予想し、三年毎に一〇パーセントの賃料自動増額をしても経済的に不合理な事態は生じないと判断していたものと推認される。

(二)  被控訴人は、本件建物の建築資金については、当初から賃借人となる不動産業者から差し入れられる敷金をその一部として充てることに予定し、不足分は銀行からの独自の借入によることを予定していた。被控訴人は、本件仮契約も成立し、本件建物の建築資金の一部に充てる敷金額(四九億四三五〇万円)も決まってその一部の支払もされたことから、昭和六三年一二月一五日、株式会社大林組(以下「大林組」という。)との間で、代金二〇一億三五五〇万円で本件建物の建築請負契約を締結し、最終的には、被控訴人は、大林組に建築請負代金として二〇七億六一四五万七〇〇〇円と監理料として七二三一万四〇〇〇円及び設計料として四億二六二三万八〇〇〇円の合計二一二億六〇〇〇万九〇〇〇円を支払った。また、被控訴人は、フォスター設計事務所に対し、設計料として一八億一〇四〇万九〇七〇円を支払った。

なお、被控訴人は、銀行から本件建物の建築資金として、右敷金でまかないきれなかった金一八一億二六九一万八〇七〇円について融資を受けた。

(三)  本件建物は平成三年四月一五日に完成したので、被控訴人は控訴人に対し、控訴人賃借部分を引き渡した。そして、被控訴人と控訴人は、同年四月一六日、本件仮契約に基づいて本件契約を締結した。

なお、被控訴人が、本件(仮)契約の相手方として三井不動産ではなく控訴人を選択した理由には、その契約内容に加えて、控訴人側の担当者が三井不動産側に比べてより熱心に被控訴人方を訪問し交渉に当たったことと、その幹部社員である高島専務らも度々訪問して、その際、「いかなる理由があっても約定の賃料の支払いを保証します。」「どんなに経済事情の変動があっても、そのリスクは住友が取ります。」などと告げて、控訴人によるサブリース事業においては、賃料が長期にわたり中途解約されることなく保証され、事業のリスクが控訴人により負担され、被控訴人は約定賃料どおりの安定した収入を確保することができることを重ねて言明したことも、重要な動機となっていた。

3 (サブリース契約の意義とその法的形態)

サブリースとは直訳すれば転貸借であるが、現在いわゆるサブリース契約といわれている内容は、土地所有者が建築した建物を賃貸ビル業者(サブリース業者)が一括して借り上げて、自らの採算でこれを個々の転借人(テナント)に転貸し、所有者に対してはその種々の形式で定められた基準による賃料を支払うものであり、その事業全体をサブリース業と称するものである。その業態とサブリース契約の発展の経緯は概略次のようなものであった。

(一)(1)  建物所有者が一棟の建物の賃貸を行う場合は、かつては自分で個別に各テナントと賃貸借契約を締結することが一般的であった。しかしながら、この方式は日常の賃貸物件の管理、契約の締結、契約終了時の敷金精算等の事務等の煩雑な業務を賃貸人自身がしなければならなかった。そこで、不動産業者に、日常の賃料の回収、管理までを含めて右事務を委託し、賃料の一定比率の管理手数料として支払う管理委託する契約が締結されるようになった。

(2)  次いで、右事務を全て不動産業者に任せ、代わりに不動産業者としてはより多くの利益を取得するために支払賃料額を転貸料を基準として一定の比率をもって定める契約がなされるようになり、これはガラス張り方式のサブリース契約と称されるようになった、そしてさらに、賃貸物件の空室による賃料の収入減の回避のために、空室が発生しても一定額あるいは一定割合の支払いを行う旨の特約が付されて賃料保証がされるような形態も生まれた。また、ガラス張り方式のサブリースでも、テナントが空室の場合にも直前転貸料の一定割合を支払う空き室保証を付加した形態のものも生まれるようになった。

更には、支払賃料は原則として一棟の建物の転貸料に対する一定割合とし、空室が発生して一定額以下となった場合には予め定めた定額の賃料を支払う旨の契約がなされる形態のものも現れた。前記三井不動産が被控訴人に提案した企画案は右空室賃料についての最低賃料保証を伴う賃料ガラス張り方式のサブリース契約であった(甲第六号証)。

(3)  一方で、支払賃料が毎月変動するデメリットを回避し、かつ空室の場合にも一定額の支払いを約束するため、毎月一定額の賃料を支払う形式である「仕切方式」といわれる契約形態も発展して現われた。この方式は極めて単純な転貸借の形式をとるが、サブリースの歴史からすると、管理委託契約からの最終的な発展形態である。ただし、サブリース契約の諸々の形態が発展する過程において、いずれの契約類型においても、長期かつ大幅な賃料相場の下落は想定されていなかったのが実情であって、長期かつ大幅な賃料相場の下落の際に支払賃料を下支えするなどという機能が着目されることは、いわゆるバブルの崩壊前にはなかった。

(二)  また、サブリース契約は、不動産業者のサブリース事業への関与の仕方によって次のように分類される。

(1)  総合事業受託方式

ビル用地の確保、建物建築、建物賃貸借の管理まで一貫してデベロッパー等に委託される方式

(2)  賃貸事業受託方式

ビル用地確保、建物の建築は貸主側で行い、借主側(ビルの賃貸業者)は、その完成した建物を一括して借り上げ、ビルの賃貸事業についてのノウハウを提供し、最低賃料を保証する方式

(3)  転貸方式

不動産業者がビルを一括して賃借し、自らも使用、利用するが、他に転貸することができる方式で、小規模ビルの賃貸事業、会員制リゾートマンション、宿泊施設等に多いもの

(三)  この経済的事業の観点からサブリース契約を見ると、同契約は、ビルの所有者が建物を出資し、これを不動産業者がその経営を担当して収益をあげる目的の共同事業であって、その法形式として前記の共同事業性の程度にしたがって、転貸を前提とする賃貸借契約、ビル管理契約等の各種の契約がその事業目的のために統一的に組織されて締結される複合契約であると解される。

二  (本件契約に対する借地借家法三二条の適用の可否について)

1  本件契約の内容及び前記その締結の経緯によれば、本件契約は、賃貸事業受託方式のサブリース契約で、本件ビル全体に係わる機能やシステムや共用部分の管理は被控訴人がしている点が特異ではあるが、その賃料ないし対価の側面から見ると完全仕切り方式によるものである。

2(一)  本件契約は、建物賃貸借契約の法形式を利用しているから「被控訴人が控訴人に建物の収益を為させることを約し、控訴人が被控訴人に其賃料を払うことを約する」(民法六〇一条)建物賃貸借契約の一種がその組成要素となっていることは否定できない。

しかし、本件契約は、通常見られる賃借人が目的物をその用方にしたがって直接に占有して利用する賃貸借契約や、通常の転貸借契約と比較すると、次のような特色(以下「本件特色」という。)がみられる。

(1) 賃借人たる控訴人が控訴人賃借部分を自ら使用することを当初から全く目的としないもので、これを転貸して賃料と転賃料の差額を自らが収取することを目的として契約されているものであること

(2) 本件契約は、右契約目的から必然的に重層的契約関係(同種類の典型契約である賃貸借契約の重層化関係)を生じさせるものであること

(3) 被控訴人と控訴人との間の賃貸借が、実質的に意味のあるものとなるためには、もう一つの契約関係が控訴人と第三者間に転貸借関係として存在し、転借人たる第三者の控訴人に支払うべき転貸料が、被控訴人と控訴人とに配分される状態が成立していることが必要であること

(4) 被控訴人は、不動産を有してはいるが、その経営についての知識・経験が十分でなく、また、運用すべき資金も十分には有せず、一定期間の経過後には、その不動産の所有を確実に維持していたいとするもので、他方控訴人は、不動産の管理・運営のための知識・経営能力をもち、その活用のための資金をも有しているが、ただ、それらを活用するに適切な不動産を有しないというものであること、そして、両者が一つの不動産からの収益の獲得を目的とし、その所有と経営とを分離して役割を分担すべく、賃貸人はその所有財産を出資し、賃借人がその収益をあげることを任されるものであること

(二)  したがって、本件契約は、賃貸人と賃借人とがそれぞれの欠点を相補って、いずれもが効率的に収益獲得のために本件共同事業に必要とされる組合的(組織的)関係を形成する一環として、共に収益を目的とする企業同士が共同して行う収益事業としての目的達成のために、一方の経営能力等を他方が利用する方法として成立させた契約である。

それ故に、本件契約は、典型的な賃貸借契約とはかなり異なった性質のものと認められるので、右重層的法律関係にある各当事者間(賃貸人と賃借人《転貸人》と転借人との各間)には、その各目的の達成にそれぞれ適した法律関係が形成されるように解すべきであるので、本件契約は民法の典型契約の一つである建物賃貸借契約の法形式を採っているが、その実質的機能や契約内容にかんがみると、それとは異なる性質を有する事業委託的無名契約の性質をもったものであると解すべきであり、当然に借地借家法の全面的適用があると解するのは相当でなく、本件契約の目的、機能及び性質に反しない限度においてのみ適用があるものと解すべきである。

3  そこで、本件契約の重層的契約関係の基層に位置する賃貸人と賃借人間に借地借家法三二条に基づく賃料減額請求権を認めることが、本件契約の趣旨目的に合致するか否かを検討する。

本件契約は、前記のとおりの特色があり、本件サブリース事業による収益の獲得を目的としており、本件契約内容及びその締結のための交渉経過によれば、本件契約は、取引行為者として経済的に対等な当事者同士が、不動産からの収益を共同目的とするものであり、それぞれがより多額の収益を確保するために、不動産の転貸からあげられる収益の分配を対立的要素として調整合意したものであることは明らかである。その結果、契約期間が一五年間と長期であり、かつ、中途解約禁止が定められたこともあって、当初賃料額のほか将来の賃料額の増額に関しても締結交渉の中心的課題でとされていたことも明らかである。そのため、両者は、賃借人たる控訴人の居住や店舗、事務所等の場所的事業拠点の安定的確保、存続を保障することを主たる目的としたものでなく、右の安定的確保、存続のための代替的利害調整の方法である賃料の増減額請求権、その他の制度を採用している借地借家法の全面的適用を不可欠の前提としていたものでなく、その経済的事業運営の見地のみからその締結交渉をしたものである。被控訴人は、収益についての定額化による安定化と将来にわたる確実な賃料増額を図るために、三年毎の自動賃料増額条項(六条一項)と転貸料と賃料が関連しない仕切り方式をその利益分配方法として選択して本件契約を締結したのであるから、その限りにおいて本件契約においては賃貸人に賃料保証がなされているものと解される。他方、賃借人には賃料と転貸料の差額の無制限な取得の可能性が確保されたのであるから、本件契約は、控訴人にとってはハイリスク、ハイリターンのものであった。また、右仕切り方式と賃料自動増額条項から生ずる賃料と転貸料との乖離が本件契約の目的であるサブリース事業上著しく不合理となったときに対処するために、その調整条項(六条三項)がわざわざ設けられた。すなわち、本件サブリース事業に関しては、その収益の分配方法及びその額が、双方の契約当事者にとってまさに本質的問題であるが、それが対等な力関係の当事者の自治に基づいて経済合理性に則って定められたものである(賃借人たる控訴人においても、賃料と転貸料の逆ざやを防止する手段としては、その賃料についてのガラス張り方式を選択することによりこれを防止することができたにもかかわらず、それを本件契約の締結交渉中にその選択が控訴人から話題にされた形跡はない。)。右のとおり本件契約が継続的契約関係にあることからする賃料と転貸料との乖離の問題についても、長期的な視野に立って利害調整することを原則とし、短期的には三年毎の賃料調整で最小限の利害調整をすることを予定しているものと解すべきであり、その解決の方法及びその調整についてそれなりの合理的な合意がなされているものというべきである。

以上のことからすると、本件契約六条三項は常に賃借人に不利益をもたらす約定とはいえず、本件契約にあっては、借地借家法三二条の賃料増減額請求権の制度は、本件契約六条三項の調整条項で修正され、手続や請求権の行使の効果など限定された範囲でのみ適用があると解するのが相当である。

しかしながら、被控訴人と控訴人間では、本件契約の締結に当たっては、オフィスの賃料の一般的相場が長期間大幅に低落して、被控訴人が取得する賃料と控訴人が一般テナントから取得する転貸料との間に大幅ないわゆる逆ざやが長期間生ずる事態は想定されていなかったことは前記のとおりであるから、この観点から本件調整条項の適用範囲について検討をする必要がある。

なお、借地借家法三二条については、借地借家法三七条が列挙している強行法規中には同三二条は入れられていないが、借地借家法がもともと社会的弱者の保護の社会立法の面を有していたことや、賃貸借取引の対象である不動産利用権が契約の解約等があっても直ちに代替不動産への移動することが社会生活上あるいは営業上の事実上の制約を伴いがちで即時流動性の少ない商品であり、賃貸借取引の市場も即応性に欠けるところから、その利害調整の必要のためにその要件方法、手続等を定めた立法であるので、賃借人に一方的不利益を課すおそれのある賃料減額請求権の制限の約定は、原則として同法三二条の法意に反し無効と解するのが相当である。

しかしながら、本件契約は、長期継続を予定し、解約やそのための賃借人の代替賃借物件への移動という市場機能による当事者の利害調整を想定せず、長期的な事業収益の分配とリスク配分の均衡を指向したものであって、典型的な不動産賃貸借契約と質的に異なるところがあるから、同法三二条の適用の必要が認められないものであり、その脱法目的でなされた契約でないことも明らかであって、同法三二条が片面的強行法規であることを、本件契約関係において貫徹する必要性は存しない。

三1(一)  本件契約六条三項には、「急激なインフレ、その他経済事情に著しい変動があった結果、第一項の値上げ率及び第七条一項の敷金が不相当になったときは、第一項の値上げ率を控訴人、被控訴人にて協議のうえ変更することができる。」旨の定めがあるが、その趣旨は、賃料についての仕切り方式が採用されたことを前提に、同条一項所定の賃料の一〇パーセントという定率の自動賃料増額条項の適用された結果、賃料と転貸料との間に著しい乖離が生じて、収益の分配に関して経済合理性の判断に基づき締結されている共同事業の実質を有するサブリース契約の性質から、収益の分配に著しい不合理が生じたときに賃料増額率の調整という形で収益配分の見直しをすることを、当初から予定したものである。同条項は「急激なデフレ、その他経済事情に著しいマイナス変動があった結果、賃料値上げ率や敷金が不相当となったとき」については何も規定していないが、本件(仮)契約の締結に至る交渉の経過によれば、当事者双方は、近隣ないし同種オフィスビルの賃料相場が著しい低下を来すような事態は念頭になく、むしろ著しく高騰した場合に本件契約六条一項の自動賃料増額特約に定められ値上げ率を上回る値上げもあることを想定して六条三項が定められたものであることは、前記のとおりであるから、本件契約において、同種オフィスビルの賃料相場が下落傾向を続けている場合の本件賃料の改定をどうするかの問題については、契約上白紙であったと解するのが相当であり、その場合の契約条項が欠落しているからといって賃料値上げ率の一〇パーセント以下への切り下げを否定する合意があったものとは認められない。被控訴人代表者も急激な経済変動があれば協議のうえ最小限値上げ率がゼロになることがあり得ることを認識していた旨供述している。同条項の趣旨が、前記のとおり本件契約における収益分配に不合理状態が生じた場合の調整を図るものであることにかんがみ、右のような場合には、右条項に準じて契約解釈するのが契約当事者の意思に沿うものと推認され、かつ、当事者の公平に適うものというべきである。したがって、本件契約六条三項は、賃料値上げ率の増加ばかりでなく、その値上げ率の減少に対しても類推適用があると解釈すべきである。

ただ、その「値上げ率の変更」という文言及び本件契約における本件サブリース事業の収益配分の実質を有する賃料額については、少なくとも当初合意賃料を下回ることがないという事実上の賃料保証の趣旨が存することは、前記のとおりであるから、本件契約六条三項は、その値上げ率の変更に関してはそれはあくまでも値上げ率の変更であって、値上げ率をマイナスパーセントとし、その結果改定賃料額を、当初合意賃料を下回るものにすることは本件契約の解釈として認めるのは相当でない。

また、本件契約六条三項の右趣旨等と、その交渉過程において、同条項の要件を一般条項である事情変更の原則の要件より、緩和する趣旨の文言が合意された経緯からすると、その適用要件は、専ら当事者の責めに帰すべからざる事情である一般的経済情勢による賃料と転貸料との間に不合理な著しい乖離が生じたときを意味すると解するのが相当である。

そして、その調整手続としては、賃貸人と賃借人が協議して行うとされているが、同条項の趣旨並びに本件契約にはその契約の目的に反しない限度で借地借家法三二条の適用があるのみであって、その無限定な適用がないことに照らすと、同条項は、所定の客観的状況が存在するに至ったときには、当事者に単なる協議を義務付けるだけのものではなく、協議が成立しない場合(協議をしても成立の見込みがないことが明らかなときは協議を経ない場合を含む。)には、当事者は、本件賃料増額条項による値上げ率を本件サブリース事業として合意されていた収益分配の趣旨ないし原則に適う値上げ率に当然変更しうる形成権として行使できるものと解すべきである。

(二) しかるところ、控訴人は、被控訴人に対し、平成六年二月九日に第一賃料減額請求をし、次いで平成六年一〇月二八日に第二賃料減額請求を、平成九年二月七日に第三賃料減額請求を、平成一一年二月二四日に第四賃料減額請求を順次したことは前記のとおりであり、右各賃料減額請求が借地借家法三二条所定の減額請求としては、その行使時期及びその程度について直接無限定に適用のないことは前記のとおりであるが、控訴人の合計四回に及ぶ借地借家法に基づく前記賃料減額請求のうち、右第一及び第三の各賃料減額請求の意思表示は、それがなされた乙第一号証の一、二、同第二号証、同第三号証の一、二及び弁論の全趣旨によれば、控訴人は右賃料減額の意思表示は、その行使時期は、本件第一次及び第二次賃料自動増額の時期の到来の際にそれに対抗してなされたもので、その内容としても本件契約条件見直しの件の通知としていること、その通知は、本件契約六条三項の趣旨である一般的経済情勢の変化による賃料と転貸料の間に不合理な乖離が生じたことを理由としていることが認められるので、右意思表示はそれを本件契約六条一項所定の自動賃料増額特約による賃料の一〇パーセント増額に対する、同条三項による値上げ率を変更を求める旨の意思表示を含んでいるものと解するのが相当である。

また、本件訴訟の経緯から明らかのように、控訴人と被控訴人との間においては右当時本件契約六条三項の協議は成立の見込みは全く存しなかったものであるから、右変更の意思表示は、当事者間の同条項所定の協議を経ていないものの、その変更請求の有効な範囲の最大限である値上げ率〇パーセントにすることを求める形成権の行使の趣旨を含むものと認めるのが相当である。

(三) 前記本件契約に関する判断等並びに鑑定の結果、乙第一三四号証、証人横須賀博の証言並びに弁論の全趣旨によれば、本件賃料等の額については、次のとおりの事実が認められる。

(1) 平成三年四月一六日から平成六年四月一五日までの間の賃料は、年額一九億七七四〇万円(月額一億六四七八万三三三三円)である。

(2) 平成六年四月一六日、本件契約六条一項の自動賃料増額特約を適用すると、右同日から平成九年四月一五日までの賃料は、年額二一億七五一四万円(月額一億八一二六万一六六六円)に増額されることとなる。

(3) 平成九年四月一六日、本件契約六条一項の自動賃料増額特約を適用すると、右同日から平成一二年四月一五日までの賃料は、年額二三億九二六五万四〇〇〇円(月額一億九九三八万七八三三円)に増額されることとなる。

(4) これに対して、鑑定の結果及び乙第一三四号証によれば、控訴人賃借部分の転貸賃料に該当する適正賃料(共益費をふくまない。)は、第一賃料減額請求時点では月額九一七四万四〇〇〇円であり、第三賃料減額請求時点では月額六八七八万三〇〇〇円であり、第四賃料減額請求時点では月額六五二〇万円であることが認められるので、その各時点に近接する各自動賃料増額の時期である平成六年四月一六日、平成九年四月一六日時点の各適正賃料もいずれも引き続きオフィス賃料の低落傾向に照らして右各金額を上回らないものと認められる。

右各適正賃料は、本件契約の当初合意賃料である月額金一億六四七八万三三三三円に各時点における自動増額条項を適用した結果の増額後の賃料額と対比すると、平成六年四月一六日時点ではその約五〇パーセントであり、平成九年四月一六日時点ではその約三五パーセントにまでにしかならず、また、右各適正賃料額は、本件契約の当初合意賃料と比較してもその五五パーセントに、次いでその四一パーセントに低下している。

控訴人が控訴人賃借部分の転借人であるテナントから受け取っていた毎月の転貸料は、平成六年四月当時も平成九年六月当時も月額一億一五一六万二〇〇〇円であり、平成一一年三月には転借人の変更により約四五八一万円に激減し、同年四月以降も六〇〇〇万円前後で推移している。その結果、控訴人が被控訴人に支払ってきた当初合意賃料と比較して、控訴人は平成六年四月以降月額約五〇〇〇万円の収支赤字を、平成一一年三月以降は月額約一億円以上の収支赤字を余儀なくされており、当面右の毎月の収支赤字状態が解消される見通しはない。

(四) したがって、右の状況にかんがみるとサブリース事業の関係当事者の責めに帰すべからざる経済情勢、特に不動産市場や賃貸ビル市場の著しいマイナス変動により、本件賃料と転貸賃料との間に不合理な著しい乖離が生じていると認めるべきであり、控訴人の賃料減額請求はその請求どおりの減額の効果は認められないが、第一賃料減額請求及び第三賃料減額請求は、本件契約六条三項による同条一項の値上げ率一〇パーセントの値上げ率を減少させる形成効を生じさせ、三年毎の賃料自動増額の時期の到来におけるその値上げ率は〇パーセントに変更されたものと認めるのが相当である。

なお、控訴人の前記各賃料減額請求を、本件契約に対する私法の一般条項として事情変更の原則に基づく請求と解するときには、その要件としては、契約締結当時の社会事情の変更が当事者の責めに帰することができないものでなければならないのはもちろん、その変更が当事者の予見せずまた予見できない異常なものでなければならないと解される。しかしながら、控訴人は不動産取引、賃貸借に精通した大企業であり、しかも、本件仮契約締結当時はともかく、本件契約が締結されたのは、まさにバブル崩壊が開始されようとした時期、ないしはさらに、それがすでに崩壊を始めた時期であることは明らかであり、また、本件仮契約当時においても、甲第一七三号証等によれば、すでに不動産価額の高騰の継続はその実体的経済的根拠を欠くもので早晩値崩れを起こさざるを得ない旨の意見も専門誌上で論じられており、それは早晩オフィス賃料への影響も免れないことは明らかであったのであるから、控訴人は、当面少なくとも短期的には不動産価額下落、賃料相場の下落もあり得ると予見しえたはずである。また、右契約締結時に比べて右減額請求がなされたときに、事情変更の法理を適用しなければ双務契約としての当事者間の衡平が長期的展望の下においても図れない程の、物価の変動や通貨の価値の変動等がなかったことも明らかであるから、本件に右事情変更の原則の適用をすることは相当でない。

四  右判断によれば、被控訴人の控訴人に対する、控訴人賃借部分の賃料等に関する賃料等の額及び控訴人の現実に支払っていた額との差額、その差額に対する各月の遅延損害金等につき、敷金から順次充当した結果によれば、被控訴人が控訴人に対して本件契約八条に基づいて有する敷金補充請求債権は、次のとおりとなる。

平成六年四月から同一一年一〇月までの、控訴人の不足賃料等とそれに対する損害金、ないしその敷金からの充当による不足敷金の補充請求額及びそれに対する遅延損害金の始期等についての主張は別表2のとおりであるが、本件契約における賃料は前記のとおり従前賃料のままであるので、本件賃料とその支払賃料の毎月の差額(不足賃料)及び消費税等は別表3の該当欄記載のとおりとなるべきであり、またその結果、右不足賃料等を順次敷金に遅延損害金、元金の順で敷金から充当した経緯並びにその結果は、別表3のとおりとなるので、控訴人は被控訴人に対し、別紙第二債権目録記載のとおり金員を支払うべき債務があるものと認められる。

五1  控訴人は、「本件契約第六条三項に基づく賃料増額の修正条項は、値上げ率をマイナスにする請求もできるものと、また、その請求の時期も賃料と転貸料間に著しい乖離を生じた場合は何時でも形成権として行使できるものといずれも解すべきである。」と主張し、実質上本件契約に借地借家法三二条を無限定に適用すべしとするが、本件契約六条の趣旨は前判示のとおりであるから、右主張は採用できない。また、控訴人は、「本件契約については、緩やかな条件で事情変更原則がその契約内容の改定の効果をもたらす限度で採用されるべきである。」旨主張しているが、本件契約については、事情変更原則そのものが直接適用されるべきでないことは、いずれも前判示のとおりである。

2  次いで、控訴人は、「本件契約には、民法六七四条二項所定の損益分配の原則が類推適用すべきである。又は、信託法の実績配当主義の原則を類推適用して、その配当として本件賃料の相当額を定めるべきである。」旨主張しているが、本件契約の性質及びその解釈は前判示のとおりであるから、控訴人の右主張は採用の余地はないことは明らかである。

3  控訴人の主張する本件不安の抗弁については、記録によれば、被控訴人の経済状況が本件紛争によって悪化していることは、平成九年二月三日付準備書面で主張されており、また同時に提出した甲第一八四号証の一ないし九でも明らかにされていることが認められるのであるから、控訴人は、右時点後本件不安の抗弁を提出することが十分可能であったのに拘わらず、それを平成一一年一一月三〇日開廷の当審第五回口頭弁論期日において提出するのは、故意又は重過失による時機に後れた攻撃防御方法の提出と認められるもので、しかも本件不安の抗弁主張については、その主張自体不十分で具体的な補足を要する点もあり、かつその補足後には被控訴人の前記経済状況の悪化の程度等については、さらに審理を必要とするものであるから、本件訴訟を遅延させることが明らかであるから、却下するのが相当である。

4  控訴人は、「被控訴人が不足賃料についてそれを敷金から充当したため、一部複利となるため不当である。」と主張しているが、右敷金からの充当は、本件契約八条二項所定の充当権に基づいてなされたものであるから、控訴人の右主張は採用できない。

5  被控訴人は、「控訴人は、本件契約第六条により、事前に被控訴人に対する賃料減額請求権を放棄した。」とか、「控訴人は、被控訴人に対し、本件契約の締結に際して、約定賃料を保証する旨を表示した」旨主張しているが、本件契約六条の解釈及び本件契約における賃料保証の趣旨の内容は前判示のとおりであるので、被控訴人の右主張は採用しないし、「控訴人の本件契約六条三項に基づく賃料の値上率の修正の意思表示」がそれ自体すべて権利の濫用ないし信義則に反するものでないことも、前認定にかかる本件契約に関する事実関係に照らして明らかであるので、被控訴人の右主張も採用できない。

六  被控訴人は、予備的請求原因として、本件契約締結に当たって、控訴人に故意又は過失による、信義則上の説明義務の懈怠、又は、欺罔行為不法行為があった旨主張しているが、前記本件(仮)契約の締結のための交渉経過等によれば、右各事実は認められないし、また、右主張事実を認めるに足りる証拠はない。

なお、本件契約六条三項の準用により賃料値上げ率の引き下げ請求権を行使することは、本件契約の解釈上認めるべきものであって権利の濫用ないし信義則に違反するものとは認められないので、右権利濫用等の被控訴人の主張を採用することはできない。

第五  結論

以上によれば、被控訴人の本訴請求(原審での請求部分及び当審において拡張した請求部分)は、別紙第二債権目録記載の限度で理由があるので認容すべきであって、それを超える部分は理由がないので棄却すべきであり、控訴人の反訴請求(原審及び当審における追加請求)についてはいずれも理由がないので棄却すべきである。

よって、控訴人の本件控訴及び被控訴人の附帯控訴による請求の追加的変更に基づいて原判決を主文一項のとおり変更することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官鬼頭季郎 裁判官慶田康男 裁判官廣田民生)

別紙第一債権目録

金五二億六八九九万五七九五円及び

内金五九五九万六三一五円に対する平成六年五月二七日から、

内金六八〇八万二六五五円に対する平成六年七月八日から、

内金六八〇八万二六五五円に対する平成六年七月一七日から、

内金一億三六九九万三四九三円に対する平成六年九月一九日から、

内金五億五五四五万〇〇一三円に対する平成七年五月二七日から、

内金二億七四九三万八二八〇円に対する平成七年九月二四日から、

内金六億九八八七万九六一七円に対する平成八年九月二日から、

内金一四億六一三五万六〇二五円に対する平成一〇年二月一〇日から、

内金八八四三万七一二四円に対する平成一〇年二月一日から、

内金八八四三万七一二四円に対する平成一〇年三月一日から、

内金八八四三万七一三七円に対する平成一〇年四月一日から、

内金八八四三万七一一二円に対する平成一〇年五月一日から、

内金八八四三万七一二四円に対する平成一〇年六月一日から、

内金八八四三万七一二四円に対する平成一〇年七月一日から、

内金八八四三万七一二四円に対する平成一〇年八月一日から、

内金八八四三万七一二四円に対する平成一〇年九月一日から、

内金八八四三万七一二四円に対する平成一〇年一〇月一日から、

内金八八四三万七一二四円に対する平成一〇年一一月一日から、

内金八八四三万七一二四円に対する平成一〇年一二月一日から、

内金八八四三万七一二四円に対する平成一一年一月一日から、

内金八八四三万七一二四円に対する平成一一年二月一日から、

内金八八四三万七一二四円に対する平成一一年三月一日から、

内金八八四三万七一三七円に対する平成一一年四月一日から、

内金八八四三万七一二四円に対する平成一一年五月一日から、

内金八八四三万七一二四円に対する平成一一年六月一日から、

内金八八四三万七一二四円に対する平成一一年七月一日から、

内金八八四三万七一二四円に対する平成一一年八月一日から、

内金八八四三万七一二四円に対する平成一一年九月一日から、

内金八八四三万七一二四円に対する平成一一年一〇月一日から、

内金八八四三万七一二四円に対する平成一一年一一月一日から

各支払済みに至るまでの年六分の金員

別紙第二債権目録

金三五億二三二三万二四四五円及び

内金五一一〇万九九七〇円に対する平成六年五月二七日から、

内金五一三一万一六〇九円に対する同年七月八日から、

内金五一一五万一九七八円に対する同年七月一七日から、

内金一億〇二五九万八〇一三円に対する同年九月一九日から、

内金四億一七〇〇万四一四二円に対する平成七年五月二七日から、

内金二億〇六三九万七四六〇円に対する平成七年九月二四日から、

内金五億二四六八万五一四六円に対する平成八年九月二日から、

内金九億七二七二万一三六一円に対する平成一〇年二月一〇日から、

内金五二一〇万二三九九円に対する平成一〇年二月一日から、

内金五二一〇万二三九九円に対する平成一〇年三月一日から、

内金五二一〇万二三九九円に対する平成一〇年四月一日から、

内金五二一〇万二三八七円に対する平成一〇年五月一日から、

内金五二一〇万二三九九円に対する平成一〇年六月一日から、

内金五二一〇万二三九九円に対する平成一〇年七月一日から、

内金五二一〇万二三九九円に対する平成一〇年八月一日から、

内金五二一〇万二三九九円に対する平成一〇年九月一日から、

内金五二一〇万二三九九円に対する平成一〇年一〇月一日から、

内金五二一〇万二三九九円に対する平成一〇年一一月一日から、

内金五二一〇万二三九九円に対する平成一〇年一二月一日から、

内金五二一〇万二三九九円に対する平成一一年一月一日から、

内金五二一〇万二三九九円に対する平成一一年二月一日から、

内金五二一〇万二三九九円に対する平成一一年三月一日から、

内金五二一〇万二三九九円に対する平成一一年四月一日から、

内金五二一〇万二三九九円に対する平成一一年五月一日から、

内金五二一〇万二三九九円に対する平成一一年六月一日から、

内金五二一〇万二三九九円に対する平成一一年七月一日から、

内金五二一〇万二三九九円に対する平成一一年八月一日から、

内金五二一〇万二三九九円に対する平成一一年九月一日から、

内金五二一〇万二三九九円に対する平成一一年一〇月一日から、

内金五二一〇万二三九九円に対する平成一一年一一月一日から、

各支払済みに至るまでの年六分の金員

別紙物件目録〈省略〉

別表 〈省略〉

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